ふと目にした絵本作家の安野光雅さんの短い文章に日常が変わった。
【安野のことば】「セルリアンブルーは、曇天の雲が薄れて、遠くかすかにのぞく空の色だ。ここできざな言い方を加えると、なんとそれは少年の希望の色だ」
わたしはさんざん眺めたあとで、セルリアンブルーを一つ買った。まだ好きな色はたくさんあったが、ポケットには帰りの切符代しかなかった。この色を使って空を描いたときの嬉しさも覚えているが、その頃どんなに 惜しみ惜しみ使ったかわかってもらえるだろうか。
秋も深まり、日照時間が短くなり、寒さも日に日に増し、街路樹の樹が赤や黄色に染まり始める。晴れない曇りの日が多くなり、時折強い雨風で木の葉があっという間に落ちていく。
青空が恋しくなる季節のせいもあったかもしれない。とにかくセルリアンブルーが見たくて天気に関係なく空を見上げていた。雲間の青空を探す。孫子を思う。少年だった息子に二人の娘。少女だった娘に二人の息子。現在、孫たちは幼子から少年と少女に成長している。確かに雲間に現れる空色は 少年のなかに少女も含まれている。少年少女の希望の色だと思う。青空が少しでも見えると嬉しくなる。ワクワクする。
雨が降っても雪が降っても雲の上は青空なのだと想像もできる。短い文章によって、いろいろな方向に 心が動く。惜しみ惜しみ心を動かしていきたいと思う。少女だった頃よく絵を描いていた。絵画展で賞を取った時、選評で風景画の空の色合いと広さを褒められた。誰にも言えずにいたけど夢は画家だった。
我が家の書棚に数冊並ぶ安野光雅さんの旅の絵本を取り出した。スケッチブック、絵の具、画材道具も取り出した。
取り出すとき 惜しみ惜しみと呪文を唱えるように二度繰り返す。
そしてこれから、希望色で、実現を待ち望みながら、将来への明るい見通しを描きたい。
文章の力、絵の力、出会いながら・・・ 次なる年も楽しみたいと思う。
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